鮎三郎ヘボ日記

2001年9月3日（月）　竿が折れそう！

河川：球磨川　　場所：釘締の瀬（熊本県球磨村）　　時間：9:00〜12:30
天気：くもり　　水量：減水　　水温：25℃　　水質：やや濁り
人出：わずか　　釣果：2尾（24cm）

「今日は、この上の瀬がええよ」
　宿のおじさんが、川辺川のポイントを教えてくれました。
　けど、取り敢えずビール、取り敢えず球磨川、で本流に行ってみることになりました。
　相良村から山江村、人吉市を通過して、球磨村へ。左岸の県道を走って、ポイントを探します。が、めぼしい瀬の入り口には、だいたい車が止まっています。
　私だけだったら、あちこち迷うところですが、場所を知っているmura1130さんがいるので、それほどうろうろすることもなく、釘締（くぎしめ）の瀬に入ることができました。
　オトリと道具を河原に下ろして、まず、川の状態を見ます。「始めは、流れの手前で5、6本オトリを取って、それから5号玉かませて、流心に入れてみてください」と、mura1130さんが解説してくれました。養殖オトリでは、球磨川の心には入らないのです。
　よし、それでは、仕掛けをセットして。
　いよいよ、新世紀の球磨川アユ釣りのスタートです。

　

　と意気込んで竿を出したものの、10分間オトリを泳がせるので精一杯。もちろん、アタリもない。
　しかし、上の手前の岩盤の際でやっていたmura1130さんは、竿を出してすぐにヒット！落ち着いてアユを寄せてきて、見事にタモに収める。さすが。
　見ていると、そのオトリを持って、私のところに来て「これオトリに使ってみてください」なんというお心遣い！さっそくいただいて、付け替えてみます。
　なんて、普通に書いちゃっているがこのオトリ、25cmはあろうかという大アユ。ハナカン付けも慎重に、タモの中でやらなければならないのである。「こんなに大きいの、勿体無い」と、このときは思ったのであるが。

　天然アユを手に入れられたから、これからは、好循環のスタートだ。と再び意気込むが、大減水の後の増水ややの状況が悪いのか、来ない。
　あれこれやっているうちに、天然のオトリにも、疲れが見え始めてきた。流心の際に入らなくなってきたので、もう少し手前の流れのヨレに入れる。ここならば、なんとか沈んで、泳いでくれるようだ。オトリの体力回復も狙って、ちょっとここで泳がせる。
　突然、ガッ！と小さいアタリ。と同時に、流れに乗って、グーッと引き始める。来た！今年初の、球磨アユだ！
　竿は、ガチガチの引抜荒瀬。それでも、球磨川の流れとオトリの重さと掛かりアユの引きで、ぐにゃりと曲がる。上竿のベタ竿でアユの走りを止めながら、釣り人が下る。下って、目印よりも下流まで来ると、アユは今度は流心の脇を上に上り始める。しめた。と思ったが、竿を操作して手元まで寄せてくると、一気に横走り。さらに、下り出す。おうっ、おうっ、油断してはいけない。また一気に下に持っていかれそうになったが、竿の力でタメて、糸をつまむことに成功！竿を肩に担ぐ。左手、右手、指が震えて、糸をぎゅっとつかんでしまいそうになる。ヒヤヒヤブルブルしながら、下からタモですくう。
「うわー、でっかい」と独り言つ。タモには、24,5cmのアユが2尾。

　さっき書いたように、普段なら、「こんなに大きいの、勿体無い」なのであるが、2つ目も「こんなに大きいの」なのである。「勿体無い」と言っていたら、全く釣りにならないのである。そうなったら、時間が「勿体無い」のだ。
　オトリのハナカンを外し、早速掛かりアユに装着。しかし、まだ手の震えはおさまらず、少々手間取ってしまった。

　その手の震え、心の動揺が、オトリに伝わったのか、しばらく経ってもアタリがない。また弱ってしまっては困るので、適当なところで、養殖ちゃんに選手交代。
　養殖ちゃんなので、急な流れには入れられない。手前のヨレで泳がせる。
　すると、ガリッ。そして、ギュー。ここのアユは、アタリは小さいのだが、次の引きが強い。今回も、竿の力を借りて、上竿のベタ竿で、寄せてきて、すくう。また、24cmくらい。関東で言う大物が、こっちでは平均サイズなのだ。恐るべし。

　この24cmにオトリになってもらったが、後が続かない。
　うーん。どうしよう。2尾目のアユは、まだ元気。瀬脇を釣っても、掛からない。すぐ上の瀬では、mura1130さんが、こちらも苦戦の様子。さらに上の瀬に行っているTさんは、まだ戻ってこない。もしかしたら、釣れているのかも。見に行ってみようか。
　ということで、竿をたたんで、引き舟を持つ。
　ところへ、Tさんが戻ってきた。「どう？」「ダメです」と私。話を聞くと、Tさんも、似たようなものらしい。それじゃあ、わざわざ上に行っても、骨折り損になるかも。
　どうしようかな。迷った揚げ句に、mura1130さんの下の、瀬で勝負！と決定。この日のために買った、ナツメ型の5号玉がある。こいつをつけて、球磨川の瀬の流心を攻めてみよう。

　時計を見ると、12時が近い。ここまでまだ2尾だ。今日は（も）貧果に終わるのか。と焦る。
　焦って小走りで河原を行く。ここは、岩盤地帯の球磨村。石に刻まれた年輪が、永い年月、水に洗われ、表面にもさざ波を立てる。釣り人の履物の鋲が、その斑模様を拾う。
　うわあっ！タビのスパイクが岩盤のデコボコに引っ掛かって、前につんのめる。あっ、竿！左手に引き舟、右手に竿を持っている。とっさに、竿をほうり投げようとしたが、岩盤にぶつかって割れてもいけない。どうしよう、と考えているうちに、地面が間近に。ずでんどう！
　結局、手に持つ竿を無意識にかばって、右肩から転倒。しかし、竿もちょっと岩にぶつかって、手元のパッドの上の部分に薄くキズがついてしまった。あやうく、折れるところであった。それよりも、何でもない河原で転んでしまったのが、ちと恥ずかしい。大したケガもなかったのは、不幸中の幸いか。
　出端をくじかれた形になったが、オトリ君には、頑張ってもらいたい。滑り止めの5号オモリをくっつけて、瀬の中へゴー！
　しかし、オトリちゃんは、瀬の中に留まれず。5号玉と、押しの強い流れで、剛竿がぐんにゃり。オトリの重さは感じないが、てっきりオトリちゃんはぐったりしてるはずだ。
　そのうち、だんだん竿が重くなり、流れに乗せて、竿を送らなければならなくなる。一度流れに負けると、歯止めが利かなくなり、結局、一番最初に竿を入れた、瀬の下の大岩周りの巻き返しに戻ってきてしまった。
　もちろんオトリは、もうヤメテ！という弱っちい顔になっている。
　もう一頑張りで、瀬の上のチャラの黒く磨かれたところを攻めてみたが、かなわず、であった。
　上に移動していたmura1130さんも戻ってきて、「他行こう！」となったのである。

　

　ここを下るときには、舟の釘を締めなおした、という釘締の瀬ですが、オトリボロボロ、私の体もボロボロ。ここは、釘締じゃなくて、首絞めの瀬ではないかと、思うのです。

釘締の瀬1

釘締の瀬2 この真中ぐらいでコケちゃいました

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2001年9月3日（月）　久々の川辺

河川：川辺川　　場所：上下坂（熊本県相良村）　　時間：13:00〜15:00
天気：くもり　　水量：減水　　水温：22℃　　水質：澄み
人出：わずか　　釣果：2尾（23cm）

　車での移動中に、Tさんと私は、宿で作ってくれた弁当を食べます。土木作業の方が泊まる宿なので、ボリューム満点。腹ごしらえだけは、完璧です。
　午後は、「オヤジが言っとった所に行ってみっですか」ということで、川辺川に移動。　宿から見える瀬の右岸側に車をとめて、川へ。mura1130さんは、我々が昼飯タイムのときに運転してくれていたので、これから昼食です。まずは、私とTさんが試釣りということです。

　

　Tさんは、すぐに下手のガンガンに入る。来球磨回数は10回を越え、二股の瀬で大物に何度も仕掛けを切られているというほどであるから、当然の場所選択。
　私は瀬肩の鏡に立って、まずはオトリ確保の構え。オトリは、オトリ缶にいた元気なのに交換済みだ。おたの申します！と送り込む。
　球磨のアユは、熊のように元気だ。0.26号の水中糸、1.2号40cmのつまみ糸、1.7号のハナカン糸を背負って、グングンと上へ泳ぐ。
「そろそろ掛かっですよ」と心の中で期待する。が、来ない、来ない、来ない・・・、「掛かんねべや〜」といつの間にか、栃木弁になるくらい来ない。
　来ないので、更に上に移動して泳がせる。この行動が当たって、アタった！目印が、一気に上流に趨り、そして下ろうとする。それを竿でいなして、止める。そのまま自分だけが下がり、掛かりアユの下流に回りこむ。
　オトリが水上に完全に出て、掛かりアユの背中が見える。「もうちっと、落ち着いて」糸が手の届くところまでやって来る。右手だけで竿を持ち、左手を、糸に、伸ばす。
「うわわ！」やられた。完全にやられた。あと一息だったのに、最後に身切れ。やられた。

　しばらくして、下で釣っていたTさんがやって来た。「全然ダメだよ」とのこと。「目の前に、コロガシが入って来ちまいやがって。いっぺんに釣る気なくなっちゃったよ」と江戸っ子口調で残念がる。釣りをやるには、短気がいい、というが、Tさんも相当の短気である。

　ちょっと話をしてから、Tさんと入れ替わるようにして、下のガンガンに入ってみる。
　球磨川は岩盤の川、川辺川は石と岩の川。したがって、球磨川の瀬は「トウトウ」、川辺川の瀬は「ドウドウ」水深は球磨川の方がもちろんあるのだが、波の高さ、盛り上がりは、川辺川も負けていない。白泡を立てて、ドウドウと流れる。
　その流れの中へ、オトリを入れて行く。水深が浅く、石が大きいので、底流れは表層ほどはない。オモリをつければ、なんとか入る。
　しかし、そのまま強引に引き上げることはできないので、上げては下げ、上げては下げの繰り返し。
　すると、ようやく、ガッガガー、グーン！ほれ来た！すぐさま竿を寝かせて耐え、自分が下って、引き寄せてくる。ヘチに寄って来てから、ちょっと駆けずり回ったが、なんとかゲット！23cmの小振りのアユちゃんだったが、今年初の川辺アユだ。やっぱり、美しい。タモに入れた瞬間に漂う香りが、麻薬のよう。
　その催眠を振り切るように、一息深呼吸をして（というよりも、川の中をばしゃばしゃやって、疲れた）、川辺川に再挑戦。
　たしかに、目の前で釣っているコロガシのおじさんは、気になる。ポツポツながら、瀬尻で良型を上げている。
　しかし、対岸にいるので、気にしないことにして、自分の釣りに集中する。
　と、もう1尾。これも、あっちこっちしながら、タモに収める。
　追いが悪く、それ以上続かなかったが、久々の川辺のアユに、少し満足であった。

　

　mura1130さんは、我々の釣りを見ていて、釣れないことがわかっていたのか、竿は出しませんでした。
　そういえば、今年は、川辺川の尺アユトラスト運動で、漁師さんが気合いを入れてアユを捕っているので、川辺川のアユが少なくなった、といううわさです。一時的な補償金をもらうよりも、アユで商売した方が特だ、ということを、漁師さんにわかってもらうために、川辺川を守ろうという女性たちの会が中心になって行っている運動です。アユが釣れなくなるのは辛いですが、永遠にそうなるのは、もっと辛い。ここは、がまんなのです。がんばれ、がんばれ、川辺川！

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2001年9月3日（月）　なんばしよっとか

河川：球磨川　　場所：川辺川合流鉄橋下（熊本県相良村、錦町）　　時間：16:00〜18:00
天気：晴れ　　水量：減水　　水温：25℃　　水質：やや濁り
人出：多め　　釣果：1尾（25cm）

　タイトルは、福岡っぽいですが。

　それ以上釣れる雰囲気ではなかったので、再びの移動です。
　今度は、球磨川と川辺川の合流点の鉄橋下にやって来ました。三波迫（なんば）の瀬の上です。ここは、毎年のように、Tさんが大物を狙い、いつも、グワングワンの瀬の中に引っ張り込まれて、ついぞ取り込めないというという所なのです。
　到着したときには、すでに陽が傾いていましたが、瀬肩には、数人の釣り人がいて、入れません。大きい淵は空いていますが、私はあまりやる気がしない。そこで、その大淵の上の瀬でやってみることにしました。Tさんは、淵でやってみるようです。

　

　この瀬は、球磨川にしては、白泡の立つ、絞り込まれた流れである。狭い瀬の両脇には、大きい岩のような岩盤があり、流れを弱めている。
　オトリもすでにお疲れの様子なので、オモリをつけて、瀬脇から入れてみる。疲れてはいるようだが、潜って、引きについてきてくれる。
　つい、嬉しくなって、瀬頭の流心に入れる。2,3秒は、位置を保っていたが、すぐに、「だめだこりゃ、次行ってみよう！」と流されてしまう。
　それでも、オモリの効力か、あまり弱っていないようなので、流心の周辺を探ってみる。
　今日は、ここまで4尾。もう、釣れないだろうなあ、という諦めの心理も働いて、余計に釣れなくなる。
　下に行ってみようかな、と思っていた矢先、腹に入れていた携帯電話が、ブルブル、と震えだす。秋田のなるせさんが、わざわざ電話をしてきてくれたのだ。とりあえず、オトリは、手前の岩の下で休んでもらう。
「どう？」「う〜ん、ダメです。みんなオトリサイズの24cmです」などと話しをしていると、ガツガツガツーン！「うわあっ、きたぁ！」
まさか、片手に携帯を持って、掛かるとは、夢にも思わなかったので、完全にアユに先手を取られる。
　掛かりアユは、流心に飛び込んで、流れに乗って一気に下る。竿は、完璧にのされて、その場では修復不可能。「うわうわうわ、一旦電話切ります！」と言って、会話は終了したものの、慌てているので、なかなか電源ボタンを押せない。
　とりあえず、携帯を放して（ひもでつながってるので、落ちない）、付いて下ることに集中。岩盤を、飛び跳ねるようにして、必死で付いて行く。30mほど引っ張られて、とうとう瀬尻まで来てしまった。ここまで来れば、一安心。やっと携帯の電源ボタンを押す。
　タモにすくったアユは、25cmの、お手ごろオトリサイズ。いやー、バレなくて良かった。転ばなくて良かった。

　その元気アユをオトリにして、流心へ。もちろん、5号玉は必須。何しろ、それでも沈むのがやっとなくらいなのだ。
　その後は、泣かず飛ばず掛からず。空が赤信号を出してきているので、やめにしようと、mura1130さんとTさんの元へと向かった。

　

　さて、Tさんのところへ行くと、一緒にいたmura1130さんが、「Tさん、35cmを釣りなさったですよ」なぬ！35cm！？「いや、もっとあったかな」えー！！、さすが、球磨川！
　そう言うmura1130さんも、Tさんも、ニヤニヤしています。それもそうでしょう。だって、35cmだもん。
　でも、変だ。普通なら、引き舟を見せてくれてもいいところですが、それがないのです。
「でっかい、鯰」と、mura1130さん。ナマズ、なのでした。漢字で書けば、中国に行けば、鮎ですけど。
　でも、ナマズが釣れるなんて、初めて聞きました。よくあることらしいのですが。
「そういやあ・・・」とTさん、「前に来たときに、次の日のオトリにしようと思って、釣ったアユを3匹、引き舟に入れて、川の中に入れておいたら、次の日に、ウナギに変わってたことがあったなあ」その心は、ウナギが、オトリを食べに来て、そのまま逃げられなくなった、ということ。簡単なウナギ籠、というわけなのです。
　ナマズといい、ウナギといい、川辺川と比べて汚いという球磨川ですが、まだ魚種も数も多いんだなあ、と感心しました。

　今日の貧果を、宿に持ち帰ると、「なんね！」と宿のおじさんにバカにされてしまいました。「一週間で、三人で、何尾釣れっかねー」言いたい放題ですが、言い返すだけの材料もなく、笑ってこらえるしかないのです。いつか、見返してやるー！

　今日は、釣ったアユを明日のためにストック。宿の裏手が川辺川なので、オトリ缶を沈めるだけで準備完了。
　さあて、風呂に入って、飲もう。
　今日も、馬刺しありです。うまいです。
　ボチボチ酔っぱらってきたころ、宿のおじさんが、「明日は、5時に起きて来て。今度は、網上げやりますから」なんと。「はい」とは返事をしましたが、朝に弱い私としては、起きられるかどうか心配。

　お酒も程々に・・・はしませんが、明日に備えて、目覚ましをセットして、寝るとしますか。　

合流点の下 この上の瀬で掛け・・・いや、掛かりました

三波迫の瀬